なんと交通費を貰えるクリニックもある

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なんと交通費を貰えるクリニックもあるブログ:20190405


記憶の軸が少しずつずれはじめたママが、
お姉さんの家族と暮らすようになって十年になる。

ママの容態が急変することはなかったが、
記憶の糸は緩やかに、しかし確実に細くなっていく…

今では、ママにとって
連日会えないおいらは、
どこかのお姉さんであったり、
誰かの奥さんであったりする。

そんなママが去年の春、
急な発熱で慌ただしく入院した。

そのことを告げる電話でのお姉さんのゆっくりとした口調が、
かえってママの緊迫した状況をうかがわせた。

ナースステーションからよく観察できる位置のベッドで
ママは眠っていた。

義歯をはずしたくち元はくぼみ、
そこから息が洩れ続けることだけを祈りながら
蒼白いママの顔をみつめた。
とうとう…という言葉が頭を過ぎる。

ありがたいことに、
熱は上下しながらも少しずつ平熱に近づいていき、
入院から3日後、一般病棟の個室に移ることができた。

快方に向かってはいたが
熱発の原因が不明とのことで、
お姉さんとおいらは
交代で1日中ママに付添った。

体温が安定しないことが不安だったこともあるが、
ママと二人きりになれる時間を
おいらは大切にしたかった。
ここなら、今なら、照れずに思いきりやさしくできる…

ご飯前、おしぼりで手を拭いてやると、
「ありがとうございます。すみませんねぇ」と
他人行儀なことを言う。

ミキサーで砕いた形のないご飯でも、
「ああ、おいしい」と目を細め、
介助するおいらに、
「ねえさんも、おあがんなさい」と気を遣う。

童謡のCDを流すと、
言葉を覚えはじめたお子さんのように語尾だけをくちずさみ、
指で調子をとる。

多くの言葉を忘れてしまっているはずなのに
プラス指向の言葉だけが出てくることは、
ママを世話するおいらにとって
何より心安らぐことだった。
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